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とあるアパートの一室。コタツに身を包ませながら一人の女がつぶやいた。
「結婚したい」
その斜向かいに座る男がそれに反応する。
「そやね、もういい歳やもんね」
外では今年の初雪が降っている。しかし、そんなことはお構いなしにその男女は会話を続ける。ちなみにテレビは点いているけれどこの場にいる誰もが全く見ていない。
「わたし、プロポーズの言葉考えてきたんや」
「え?お前がプロポーズするん?」
「そんなわけないやん。アホか」
「口悪いな。ほな、どういうことなん?」
「私が考えたプロポーズをあんたがするってこと」
「いや、それはどーいう…」
男が眉間にしわを寄せて身を乗り出す。女はそれを制するように背筋を伸ばすと、真っ直ぐに彼の方に視線を送った。
「急に呼び出してごめんね」
女の声色が明らかに変わった。
「あ、これもう役に入ってるのね」
つられるように男の背筋もピンと伸びる。どうやら寸劇のようなものが急遽始まったようだった。
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