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「今日は君に大事な話があるんだ。聞いてくれる?」
「なんで標準語なん?」
男が首を傾けるが、女は気にも留めないでその両手を彼の方に差し出した。
「これ、君に」
両手を使って小さな箱を開けるような仕草を取った。
「こ、これって…」
オーバーなリアクションで男が答える。目を丸々とさせて彼女の手を凝視する彼に対して彼女は一つ頷いた。
「そう、ポンデリング」
「一旦ストップ」
彼の手の平が彼女の顔の前に差し出された。
「なに?」
女は目をパチクリとさせ、キョトンとした表情になる。
「いや、なんでポンデリング?」
「私が好きやから」
「だとするとかなり安上がりな人やね」
「安い女やから私」
「もっと自分を大切にして…!いや、そうじゃなくて、ここはプロポーズなんやから、渡すといったらアレしかないやろ」
「あーなるほど」
気分をスイッチするように、彼女は再び背筋を伸ばす。
「今日は君に大事な話があるんだ。聞いてくれる?」
「やり直すのね」
「これ、君に」
「こ、これって…」
先ほどのやり取りを丸写ししたように男が目を丸々とさせ彼女の両手によって作られた小さな箱を凝視する。
女は一つ頷いて、にこりと良い笑顔を浮かべた。
「そう、フレンチクルーラー」
「一旦、ドーナツから離れようか」
彼の優しい調子のツッコミに彼女は少しだけ頬を膨らませた。
「だって好きなんやもん」
「うん、それは十分伝わったから」
「なんかおかしい?」
「いや、こういう時は給料三ヶ月分の…」
「あーなるほど」
男の言葉に彼女は手のひらをポンと叩き、改めて背筋を伸ばす。
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