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「…………そうだ!」
突然。
彼女は何かを閃いたように顔をあげた。俺が好きな。大きな目をにっこりさせたキラキラの笑顔で。
「私が、タケくんの新しいペンケース買うよ!」
「へ?」
「私のもアレだけど、タケくんのペンケースもかなり古いでしょ?だから私がタケくんのペンケース買うから、それ使ってよ」
どういうこと?と思って首を傾げると、彼女は。
「だ、だからその……代わりに、今タケ君が使ってるペンケース、誕生日プレゼントってことで私にくれないかな……」
真っ赤になって、もごもごとそんなことを言った。
「……な、なぜに?」
なんだこの可愛い生き物。天使かよ。思わず口走りそうになった言葉を必死で抑え込んで、俺は尋ねた。
「え、えっと……さ?」
「うん」
「この私のペンケース、タケくんと付き合うほんのちょっと前に買ったやつなんだよね。消耗品だしと思って安いの買っちゃったんだけど」
「あ、やっぱり。でも気に入ってるんだ?」
「気に入ってなかったんだけど……気に入るようになったというか。ほら、私たちっていつもこうやってレストランに入り浸ってお絵描きデートしてるじゃん?これはそのたびに持ってきて使ってきたペンケースでさ。……これ見ると、タケくんのことを思い出すと言うか。辛いときにこれ見てタケくんのことを思い出すとなんでも頑張れたというか……だから、その……」
ちょっとまて。
俺は段々小さくなる美也子の言葉を聞いて――顔面が熱くてたまらなくなった。火傷したみたいだ、なんてベタな表現かもしれないが、でも本当に――それくらい。
だってそうだろう。ボロッボロのペンケースに拘るのはつまり。それくらい彼女が、俺のことを思ってくれていたからなわけで。
それで俺のペンケースを代わりに欲しがるのは、つまり。
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