268人が本棚に入れています
本棚に追加
ひと騒動が終わったあともしばらく噂は尾を引いたが、いままでの二人の様子を見慣れているクラスメイトたちの対応でかなり緩和した。
それは日向が雪羽にべったりなのは今更だから、それをいまになってつついてもなにも面白いことはない。好きなら好きでいいんじゃないの? なにか自分たちに問題が起こるのか? というなんともさっぱりとした答えだった。
もちろんそれに納得がいかずに毛嫌いする生徒も少なからずいた。それでも恋愛の価値観なんて人それぞれでしょう、というほかの生徒たちの態度でその少数派も口を閉ざすようになった。
そして終業式を終えて迎えたクリスマスイブ。当初の予定では夕方からということだったが、日向の母親がおやつも用意して待っているからと言うので、昼過ぎくらいから日向の家に集まることになった。
期待に胸を膨らませる木山と小出はやけにいつもより身綺麗で、二人のそのあからさまな姿を見て雪羽と滝川は笑いをこらえていた。けれど友人たちの恋路がうまく行けばいいなと言う気持ちにもなった。
「まあ、まあ、素敵なお友達ね。日向がお友達を家に呼ぶのはいつぶりかしら」
「ミリヤさん、お久しぶりです」
「雪羽くん、いらっしゃい。また来てくれて嬉しいわ」
四人揃って日向の家を訪ねると、テンション高く日向の母――ミリヤに迎えられる。しかしもうすでに何度か顔を合わせている雪羽以外はまずそこで固まってしまう。
玄関先に迎えに出てきてくれたミリヤは、高校生の子供がいるとは思えないほど若々しく綺麗な女性。アンバーの瞳に綺麗な金茶色の髪。縁取るまつげまで煌めいて見える、日本人離れした容姿に三人は目を奪われている。
「ママ、お兄ちゃんの友達来たの? ふぅん、写真で見るよりまともな顔じゃない」
「もう、海玲ったら! 写真も素敵だったじゃない」
その麗しき人妻の後ろから現れたのは、さらに目を惹く少女。ほっそりとした長い手足に小さな顔。そしてグリーンの瞳に波打つ母親譲りの金茶色の髪。美少女と言って間違いのない日向の妹――海玲。まじまじと滝川たちを見つめる海玲はじっくりと品定めをしてからにこりと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!