268人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ、合格。上がってよ、私の友達紹介するから」
「日向も待ってるから、さあどうぞ」
呆然としている三人は優しいミリヤの声で我に返る。そしてどこかぎこちない動きで靴を脱いだ。その様子に雪羽が笑うと、滝川はじとりと目を細め、木山と小出はますますあたふたとする。
ミリヤについて行くと広いリビングに通された。そこには天井に着きそうなほど大きなクリスマスツリーが飾られている。小さな飾りが吊り下げられたツリーはチカチカと綺麗な電飾が瞬いていて、あっという間にクリスマスムードにさせられた。
視線をリビングの一角、ソファへと向ければ見慣れた後ろ姿が見える。その人は海玲が声をかけると振り返り、雪羽を見て相好を崩した。
「雪羽、こっち来いよ」
「あ、うん」
優しい笑みに誘われて雪羽は足早にソファへ駆け寄っていく。するとそこに座っていた面々が新たな来訪者に視線を向ける。
ソファには男女合わせて全部で五人。雪羽を膝の上に載せて満足げな日向と、その横で海玲を横に座らせている男。そして少し幼さを感じさせる可愛らしい顔立ちをした少女が三人。
その圧倒的な華を感じさせる顔ぶれに、滝川たちは少したじろいだ顔を見せる。けれどミリヤに促されてその輪の中へ足を踏み入れた。
「紹介するわね。私の大事なお友達、美優に佳奈美に千絵子。写真を見せたら行ってもいいって言ってくれた天使ちゃんよ」
上着を脱いで鞄を下ろす頃には海玲の友人たちが滝川たちの前に並ぶ。恥じらうように頬を染めたり、勝ち気な瞳でじっと見つめ返したり、反応は様々だが彼女たちは海玲の言う通り三人に興味を持っているようだ。
「あ、お前たちに選ぶ権利ないからな」
「俺は頼んでないけど」
にんまり笑みを浮かべた海玲と肩をすくめた日向に、滝川は言いにくそうにぽつりと呟く。けれどそんな反応に海玲は人差し指を振ってチッチと舌を鳴らした。
「イブの夜に男一人で寂しいじゃない。別にお兄ちゃんみたいにゲイってわけじゃないんでしょ? 可愛い女の子が一緒にいたいって言ってるんだから、無下にするのは男が廃るわよ。じゃあ、美優は滝川さん、佳奈美は木山さん。千絵子は小出さんね」
最初のコメントを投稿しよう!