覚えていなくても

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彼女はようやく僕の顔を見る。いや、目を見て話してくれた。涙でなんの感情か分からなかった。 「何度も説明しようと思った。だけど奏汰くんがいつも通り笑ってくれないと思った。奏汰くんなら自分を責めてしまうとも思った。だけどたった今説明されて奏汰くんの反応を見たとき、罪悪感を感じた。」 そこまで思っていてくれたのか。僕は彼女を落ち着かせるのと同時に、自分に覚悟を決めさせる。  僕は頑張って作り笑いをする。悲しくて、嬉しかったからどういう風な表情をすればいいのか分からなかったからかもしれないけど。 「僕は莉央たちにひどいことをしてしまったのかもしれない。それを莉央が苦しむことじゃない。僕はこの罪を償うために一人でどこか遠いところに行こうと思う。」 彼女は涙を流したまま怒った。 「一人で行かないで。私も一緒に行く。」 「駄目だ。許さない。」  本当ならこんな僕なんかについてきてくれるのは嬉しかった。だからついこんな提案をしてしまう。 「一緒に行くのは絶対に許さない。だけど、それぞれがたまたま同じところに行くこともあるかもしれないな。」 彼女は涙を手でぬぐい、いつも通りの笑顔を浮かべる。 「そうだね。そういうこともあるかもしれないね。」 そう言って、僕たちは笑いあう。
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