覚えていなくても

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「観察?誰から?」 「もちろん今の僕の上司です。あなたたちの敵である。」 僕は彼を睨み付ける。自分の怒りが伝わるように。 「安心してください。今はあなたを殺すつもりはこちら側にはありません。」 「僕の行動次第で変わるってことか?」 彼はにっこり笑う。 「ええ。もちろん、あなたと莉央さんが一緒に生きていくことも可能ですよ。今日一日だけは気をつけた方が賢明だと思いますよ。」  僕が彼女の方を見ると、彼女は僕をなだめるように見ていた。仕方ない。よく分からないがいつも通り過ごせば問題ないだろう。 「分かった。だけどひとつだけ聞かせて欲しい。」 「何ですか?」 「僕は何を気を付ければいいんだ?」 彼は肩をすくめた。 「それを言ったら観察にならないじゃないですか。無事合格したらすべてを教えます。いいですよね?莉央さん。」 彼女はビクッと体を揺らし、短くうなずいた。
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