覚えていなくても

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「今日はショッピングモールに行こうと思ってる。」 「三人だし、いいと思う。」 彼はため息をつく。 「僕を数に入れないでください。あくまで観察ですから。」 「せっかくだし楽しみながら観察すればいいと思うよ。」 彼はもう一度ため息をつく。 「分かりましたよ。何言っても行くことになるでしょう?」 僕たちは顔を見合わせて笑った。 「ショッピングモールって毎日こんな感じなのか…」 つい出てしまった言葉に彼女は反応する。 「まあ確かに記憶を失ってる訳だしね。記憶を失う前もあんまり外出てなかったし。」 彼は本当に僕たちを観察するためだけらしく、一日中僕たちの三歩後ろを歩いていた。 「いやぁ疲れた。」 たくさんの荷物を床に起き、ソファに倒れこむ。 「いくらお金があるからって、そんなに一気に買うのか。」 彼女は何故か得意気な顔をした。 「でしょう?こういうの憧れてたんだ。」 僕が苦笑いをしたとき、ちょうど彼が現れた。 「騒いでいるところ悪いですが、結果を発表させていただきます。」 僕は彼の口元を凝視する。 「結果は合格です。」 「観察のことについて教えてくれるんだな?」 「はい。」 彼女は下を向いている。床に何か見なければならないものがあるかのように。
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