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「まずあなたを観察しなければならない理由からお話しします。記憶喪失らしいですからね。まず、あなたは私たちが貰う仕事のなかで一番大きい仕事を任されていました。国のデータを盗み出したり、日本銀行をハッキングしたり。あなたはいつものようにアメリカの軍事データを抜き取る仕事をしていました。あなたは一つミスを犯してしまいました。痕跡を残してしまったために、私たちがいる名前のない『ハッカー集団』は揉め事になりました。莉央さんのように、あなたの味方をした人は少なかったです。その上その次の日、あの事故がありました。莉央さんやあなたを味方していた人はやめる他ありませんでした。」
ここまで聞いて僕は何も感じなかった。記憶を失い、空っぽだと思っていた自分は失う前も空っぽだったという衝撃があったからかもしれない。僕なんかの味方をした人たちはみんな恨んでいるのだろう。仕方ないと思う。
「僕は記憶がない。だからもうあなたたちの恨む僕はいない。皮肉なことだな。だから僕は誰にも関わらず、迷惑をかけないように生きるよ。そしてそれなりの決心がついたら死んで罪を償おうと思っている。そう伝えてくれ。」
彼はまたにっこり笑った。
「分かりました。僕たちに見つからないように生きていってください。それでは。」
そういって彼は出ていってしまった。
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