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僕はどこか知らない病室で目を覚ました。
「ここはどこだろう。」
呟いてみたものの返事は返ってくるはずもなく、何気なく外を見た。外には小さな子供たちが雪遊びをしていた。雪玉を作って投げている子もいれば、大きな雪だるまを作っている子もいる。ほんの少しの間、見つめていた。
大きな音を立てて女の人が入ってきた。年は20代くらい。黒髪で笑顔がよく似合いそうな人だ。服装から病院の関係者ではなく僕に会いに来たという感じだった。
「久しぶり、奏汰くん。と言ってもちゃんと目を合わせて話すのは二日ぶりだね。」
僕はこの人のことは知らない。誰か勘違いしているんだろうか?
「えぇっと…すいません。どこかでお会いしましたか?」
彼女は驚いたような顔をした。
「覚えていないの?覚えていないなら仕方ないね。今のあなたにはもう必要ないと思うけど置いていくよ。」
そう言ってポケットから一枚のメモ用紙を取り出し、僕の手にのせる。
「私はもう帰るね。じゃあね。」
「ちょっと待ってください。名前を教えてください。」
「いいよ。私の名前は二宮莉央。今度こそじゃあね。」
そう言って出ていってしまった。
手元に残ったメモ用紙には「退会ということにしておいた。」と書かれていた。
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