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僕が退院する日、彼女は朝早くから来た。
「これでも奏汰くんの保護者の代わりだよ?」
おどけて見せる彼女は一番近くにいる僕ですら、遠くに見えた。
手続きを終えて、自宅に帰ろうと思ったが、どこが自分の家かを思い出せなかった。僕の心中を見抜いてか顔を覗き込むようにしていった。
「家がわからないんでしょ?やっぱり私がついていて良かったね。案内するよ。」
このときほど彼女を頼りにしたことはない。心の中でお礼を言いつつ、顔に出さないようにしていた。
僕の家らしいものを見たとき、僕は愕然とした。記憶を無くす前の僕が住んでいたとは思えないほど新しく大きな一軒家だった。
「本当にここが僕の家か?」
彼女は怪訝そうな顔をした。
「私が嘘をついてどうするんですか?」
それもそうだ。嘘をつく理由は今のところないと思う。実際、中に入ったとき、つい最近まで使われていた感じだった。
まだ昼頃だったが、何もない部屋で僕は寝転がる。日差しが視界を覆い、つい目を閉じてしまう。
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