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「莉央?どうしてここにいるんだ?」
僕の問いを無視して彼女は覆面の男に話しかける。
「彼は、奏汰くんは記憶がないの。私たちやあなたたちにはもう害はないはずよ。」
覆面の男はそのまま僕の家から出ていってしまった。僕一人だけ何一つ分からなかった。気づいたら叫んでいた。
「教えてくれよ。失った過去の中で僕は何をしていたんだ。さっきの男と何の関係があるんだよ??」
彼女はため息をついた。
「一回しか話さないからよく聞いてね。まず奏汰くんの職業と私との関係性から話さなきゃいけないね。奏汰くんにはガンを患った母親がいたの。父親は少し前に離婚していたの。お金を稼ぐ人がいないから奏汰くんは働こうとしたの。だけど学生だから毎月払う入院代でいっぱいだったの。そんなときにハッカー集団から誘われたの。そこはたくさんの金がもらえて迷わず入ったの。私も同じような理由で入ったから分かるわ。そうして犯罪行為をしてお金を稼いでいたの。」
僕はここで無意味だと分かっている質問をする。
「僕の母親はどうなった?」
「あなたが事故にあう一ヶ月前に亡くなっているわ。」
やはり無意味だった。僕にはもう家族はいなくて、絶望だけが残っていたのか。自分の話ながら不憫に思う。
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