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「下女の私には不可能な話ですけど」……両手を上げて、降参を示した。
王子に一礼して後を付いてくるサラエムは、珍しく興奮を隠しきれていない。王子様と何をしていたんですか。何故、ここにいたんですか。後ろにいた男性は誰なんでしょうか、と……2人に向けられるのは羨望の眼差しだ。
「サラエムってもしかして、文官希望だった?」
「そんっ……なことは……ありませんが……」
賢い子どもだ、幼くして自分の身の上を理解している。下男として四季彩署に配属されてから一生懸命働いてくれているが、サラエムならばどの部署でも任された仕事を丁寧にこなすだろう。
庶民のサラエム、そしてマナも、今の仕事にどれだけ従事しても、この先、文官・女官に昇格することはない。いかなる場合でも変動することはない市民階級。不条理な人間社会だなと、マナは思う。
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