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「……女官様に話を聞いて、新しい情報を得られると思いますか?」
「んー? どうだろう……見かけは似たような花でも一方は猛毒であることを見分けられる人間は少ないように、わずかな違いに気付くか気付かないかは人による。でも、気付いた人がいた“かもしれない”」
「……かもしれない、んですね」
「私は植物や色の違いには詳しいけど、人の顔を覚えるのは苦手。王城勤めの人たちって大勢働いているのに、皆、同じ服を着ているでしょう? 全員同じ顔に見えちゃう」
「……同じ服………あ」
「え」
「あ、でも……すみません、何でもないです」
「なーに、なに言いかけたの?」
「いや……無茶苦茶なことを思いついてしまったので……何でもないです」
「何でもなくないでしょう。口元が笑ってるよ。ニィって。珍しくニィ~って」
「……や、でも……現実的じゃない話なので……興味を持たないで下さい。そもそも官服がなければ意味がないので」
「官服なら四季彩署にあるよ」
「え」
「ほら、新しく仕立て直すよりも色あせた箇所を染め直す方が安いから、軍服も官服も工房に預かっているものがあるよ」
「……あー……あるんですね」
「……」
「……絶対に、絶対に聞き流して欲しい話なんですけど……」
「……うん」
「……マナさんが女官に扮して情報を集めた方が、早期解決になるんじゃないかって……思っただけです」
「……」
「……」
抵抗するサラエムを抱きしめた。カゴに投げ入れて四季彩署に走った。「聞き流してください!」という言葉を聞き流し、優秀な下男を共犯者に引き入れることに決めた。
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