五章/王の住処

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政府の中枢で働き始めて12年になるが、王城と正面から向き合うことも初めてだ。 城は丘陵に築かれ、跳ね橋の向こう側は市民が暮らす町へと続く傾斜だ。 門衛が控える城門をくぐれば石畳の道が二手に分かれ、一方は城へ。もう一方は門衛、外壁警備兵が使う守衛塔につながっている。 目の前に現れた王城は3階建て構造。城壁は素色。鋭利な三角屋根の塔を中心に、人々が暮らす居館、礼拝堂、城壁塔、側塔、別塔、外殻塔が連なっているため、相当な敷地面積だ。 女官の服を着ていれば、入館証は必要ない。重厚な扉は守衛によって開かれ、すぐに高い天井と広い空間が広がった。床も、柱も素材は大理石だ。床にはくもり1つ無く、柱には緻密な彫刻が施され、細部まで高度な技術で作られていることは素人目にも明らかだ。 1歩入って立ち止まった。内部は文官、女官、下男下女が止まることなく働いていたため、マナも周囲に溶け込むように足を進めた。
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