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城内の構造はピクシーのハルジオンが知っている。迷う素振りを見せないように前を向いてついて行くが、回廊に出た途端、すれ違う下男下女が一々立ち止まって頭を下げることには戸惑った。
「……すっごい居心地悪い」
(シッ、喋ってはいけません。私が話しかけても反応しないでください)
「……」
(マナは今女官という立場でありますが、王族の方と高官の前では今のように道を譲り、頭を下げなければいけません。高官の方は紫紺色の官服です、ほら、来ますよ)
部下を従えた初老の高官に道を譲り、壁に背中を寄せて頭を下げた。どうやら周囲には不自然に思われていないようだ。
「……まずは王妃様の食事が作られた厨房に向かおう」
(所属を聞かれたら“記帳部”と答えて下さい。王城内で起きた毎日の事柄を紙で書き残す部署ですが、地味な部署なので女官の数も少なめです)
「記帳部の女官、記帳部の女官、記帳部の女官」
(……)
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