五章/王の住処

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コジュと名乗った女官の話では、確かに厨房では王族含め、政府関係者の食事全般を請け負っている。しかし、王妃が暮らす別館は厨房から距離が離れているため、どうしても料理が冷めてしまう。 「温かい料理を召し上がっていただくために、王妃様の食事は別館で作られているの。側近の女官達自らね」 その調理に関わった女官が全員捕らわれたことを思い出し、コジュのトーンが幾分か下がった。 「作る人が違うということは、献立もやっぱり違うんですか?」 「いいえ、それは同じ。そりゃ、味付けは多少変わるでしょうけど、献立に万一でも差が生じると余計な諍いが起きかねないじゃない。だから、材料だけは毎食ここから別館に運んでいるわ。無作為に選んだものだから、材料自体に毒なんてついて無かったと思う」 「別館で混入された可能性が高い、というわけか……」
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