五章/王の住処

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「……私たちは本当に“普段通り”作ったとしか言えないんです。王妃様が食事する際は退室しますし、室内には王妃様とウンマ様のお二人だけでした」 「ウンマ様の悲鳴を聞いて急いで室内に入った時には、既に床には食事が散らばっていました。王妃様が召し上がった量は、それほど多くなかったように思います……」 「ウンマか……確かにあの者なら母上のそばから離れることはないな……」 女官を引退し王妃付きの出仕となった老女。城内で女性が役職に就くことがまだ珍しい時代から国に尽くし、これまでに多くの女官を育て上げた。 最前線から退いた今でもウンマを慕う女官は多く、政務に携わる高官でさえ彼女にとっては子や孫同然だ。 王妃付きの女官が捕らわれた今、身のまわりの世話はウンマが一任している。齢80を過ぎた老体には負担もあるだろうが、疑心暗鬼になっている今は彼女を頼るしかない。 「王子様、王妃様の容体はいかがですか……」 「私たちは関与していないので、他に犯人がいるはずなんです」 「どうか王妃様をお守り下さい……ッ……」
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