五章/王の住処

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犯人に繋がる有力な情報は得られなかったが、捕らわれた身の上で王妃の容体を按じる女官達が今回の事件に関与しているとは、到底、思えない。 マナの言葉を受けなければ、当事者から直接話を聞こうとは考えもしなかっただろう。官職の罪を取り締まる部署に真相解明を任せるばかりで、容疑者を黒と疑わず、処分妥当と考えていたが…… 「処分は見送らせる。しばし待て」 「……王子様」 「そなた達を失うことは、国にとっての損失になる。必ず潔白を証明してみせよう」 立ち入りを許可した獄吏が「……これ以上は」と迎えに来た。本来、王族は“穢らわしいものと接触してはならない”とされ、地下牢への立ち入りは許可されていない。 幼い頃に城内を探検して1度下りたことはあったが、当時と変わらず環境は劣悪。冷たい鉄格子の中に幽閉することは人間の尊厳を無視しているようにも感じ取れた。
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