五章/王の住処

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ウンマから聞かされた事件当日の詳細は以下の通りだ。 女官が退室した後、王妃が食事を開始して間もなく、突然、喉をおさえて苦しみ始めた。テーブルに手を置いた際に体が崩れ、テーブルクロスごと床に倒れたために、床には食器と料理が散乱した。 外に控えていた女官がすぐに駆けつけたが、額からは脂汗、呼吸困難と手足に痙攣の症状が出ていたという。 「その後、意識を失われました。召し上がった量は本当に少なかったので、吐き戻すということはありませんでした」 「ちなみに量というのは」 「汁物を一口か、二口か……本当に食べ始めてすぐだったものですから……」 「……そんなに少量だったのか……」 喉を潤そうと香茶に手を伸ばそうとしたが、普段あるべき左手に用意されていないことに気がついた。 「まぁ、何をしているのかしら、あの子ったらお茶も出さないで……ちょっと失礼します」 「いや、構わない。あの者は粥を運ばせるために連れて来たんだ。別館の勝手が分からないのだろう」 「そんなことは関係ありません、女官たるもの常に周囲に気を配らなければ」
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