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身の置き場が無く、1人、壁の花となっていた女官がウンマの指示を受けてようやく動き始めた。
背中を向けた後ろ髪には、宝飾品の代わりに黄色い生花が付いている。最近、女官の間で流行っているのだろうか。
結局、お茶はウンマが淹れるようで、女官は菓子を持ってバルコニーにやってきた。花器の脇、テーブルの中央に大皿を置いたその手が……
『……うっ』
汚い。
驚くほど汚い。指先、爪の中まで深緑色に染まり、爪は割れ、指の腹はぱっくり割れた裂傷の痕。
食品を扱う手ではない……思わず眉を顰めて女官の顔を確認したが、顔は不自然にそらされ、斜め天井を見上げていた。
「……」
「……」
怪しさしかない。
それと同時に、指先を深緑色に染めた人間を1人、思い出した。
頬が、引きつる。
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