六章/花

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「……何をしているんだ、こんなところで……そんな格好で……」 「はて、何のことでしょうか?」 「……」 引きつった顔をしたクラウンに手首を掴まれ、露わになった自分の指先を突きつけられた。これで言い逃れは出来ないだろう?と……口元は笑っているが、目は笑っていない。 そりゃそうだ。長年、染色液に浸かった皮膚はどんな洗剤を使っても、元の色に戻ることはない。指先に藻が生えたような女官がいたら気味が悪いだろう。 「……いやぁ……独自で毒の正体を調べようと思ったんですが、城内で迷子になって……そうしている間にクラウン様からいきなりトレイを渡されたので驚きました」 「お前な……こんなことがバレたらただでは済まされないぞ」 「内部調査するにはいい考えだと思ったんです……ほら、女官様に、ちゃんと見えますよね?」 「……」 ……呆れてものも言えない、という顔。 ……相手にするのも億劫だとでもいうような目。 澄ました顔で姿勢を伸ばしてみたが、マナが演じる“女官”に対する感想はなし。 「……それで? 女官に扮して何か有益な情報は得られたか?」 「それが、何も」 「……」 表情1つ変えず、クラウンはアゴで出口をしゃくった。『見つかる前に出て行け』と、聞こえるはずのない心の声が聞こえる。
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