六章/花

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黄色い花弁。八重の構造。真横から見ると半球形。ここまでは金徳菊と酷似しているが、問題は中央の“柱頭”だ。金徳菊と比べてわずかに突出している。 「これは金徳菊ではなく、コロリウシの花です」 「……コロリウシ?」 「……」 「誤って牛がコロリウシの葉を食べるとコロリと死んでしまう。だから、コロリウシと名付けられた毒草の一種です。花は葉や根っこと比べれば毒性は弱いですが、微量でも摂取し続けると食欲不振や倦怠感、意識障害、神経麻痺。最悪、死に至ることもあるでしょう。倒れる以前から飲んでいたものですか?」 「いえ、それは……新しくいただいたもので、口にしたのは倒れた当日だけだったと思います……そうですよね、ウンマ」 「え、えぇ、そうですとも。菊花茶と薬液の飲み合わせは悪いので、お倒れになってからは1度もお出ししていません。当日も……食事の3時間前に甘味とともにお出ししたのが初めてです」 「元々体が弱い王妃様にとって、微量の毒でも体への負担が大きかったんですね。伏せがちな王妃様にとって倦怠感は珍しいことではなかったと思いますし、3時間かけてゆっくりと、全身に毒が浸蝕したものと思われます」 「……」 「……お母様」 「……母上」 「……王妃様……ッ……」
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