六章/花

8/28
前へ
/503ページ
次へ
ウンマという監視の目が緩み、クラウンと直接会話をする状況になったことでマナの緊張も解れていった。王城に入ってから礼節を示して前で重ねていた手は、今や腕組みをしながら右手は唇に触れていた。 下から見上げてそれに気付いたセシルがギョッと目を見開くが、女官らしからぬ所作にマナもクラウンも気付くことはない。 「問題は……誰が母上に茶葉を贈ったかということか。母上、先ほど“新しくいただいたもの”とおっしゃっていましたが、誰から受け取ったんですか」 「……それは……ッ……」 「……」 「……大官より……陛下からと……ッ……」 「父上から?」 「!?」 胸を押さえて前屈みになる王妃の顔色は苦しげだ。口での呼吸を確認し、マナはウンマに代わり薬液を一口飲ませた。背中に添える手には、浮き出る背骨の感触が確認出来る。おそらく衣類の下は、想像以上に痩せ細っているだろう。
/503ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加