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今は片頬が腫れてしまっているが、将来が楽しみ美少女だ。よくもこんなに可愛い娘の顔を父親は叩けたものだと、他人事ながら胸が痛い。
「命令よ」
「はい?」
「お兄様を守ってあげて」
「……」
「この城にお兄様の敵もいないけれど、味方もいないの……本当に信頼している臣下は、セトくらいだと思う」
幼い頃から護衛も連れずに単独行動していたクラウン。確かに王子付きの臣下らしい臣下はセトが初めてだ。
クラウンが無能というわけではない。人望がないわけでもない。現国王、カフ・アル・カディブが50才とまだ若く、この先も在位が続くことを考えると若い王子の存在は軽視された。また、世辞や献上品が通じないクラウンは、高官にとって扱いづらい存在なのだろう。
しかし、一介の女官……本来は下女であるが、王女直々に“守ってほしい”と頼られるのは重責だ。
「……心の支えになれるように……頑張ります」
「……心の支え……」
あからさまな落胆、そして不満げな顔。
「女官なら身をていして王族を守りなさい」と、王女は将来、なかなかの辣腕を振るいそうだ。性格はどうやら、父親に似ている。
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