六章/花

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*** 国王付きの大官ヒコリは、自身の執務室で午後の政務をこなしていた。突然の王子訪問に驚きは隠しきれず、部屋へ通した文官も慌てた様子で後ろを追ってきた。 大官に与えられた個室には、王家の公務や継承・系譜に関する王族典範がずらりと並んでいる。机の上には今日中に大官の承認が必要な書類が山積みされ、墨筆と角判、処理済み書類の受け箱も既に2箱目だ。 国王以上に忙しい身の上だということは重々承知している。800人を超える文官をまとめ上げる手腕の持ち主であることも間違いない。しかし、それでも──…… 「クラウン様、いかがされ「この茶葉を母上に贈ったそうだな?」 「え? あぁ、はい。少し前に別館の方へ私がお届けしましたが」 「中身は何か知っているか?」 「え……えぇっと……菊花茶……金徳菊を使った花茶だったと思いますが「違う、これは金徳菊に酷似したコロリウシという花が使われている」 「……コロ……」 「牛も殺せる、猛毒だそうだ」 「!?」 そこまで聞いて、大官は王子が自分を訪ねてきた理由を察した。同時に王妃が倒れた理由を理解した。
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