六章/花

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「落ち着いて下さい、クラウン様。確かにこの茶葉は陛下から王妃様へ贈られたものですが、毒が入っているというのは本当なんですか? もしそうだとしたら、疑うべきは製造元であるはずです。何故、毒花が混ざったのか……」 「混ざったのでは無い、毒入りの茶葉をわざわざ作ったのだ」 「わざわざ?」 机の上に問題の茶葉を広げた。マナから説明された後でも、見た目も香りも金徳菊そのものだ。コロリウシの茶葉を見せられたヒコリも顔には当惑の色を浮かべている。 「……これは」 「これがコロリウシだ」 「え!?」 「植物に詳しい者に確認した。金徳菊に酷似したこの花は、我が国には自生しない。クリニア皇国の南部にのみ自生する稀少な花だそうだ」 「……クリニア……」 「それ故、この国での知名度はない。この茶葉で淹れられた香茶を菊花茶と疑わずに飲む者は大勢いるだろう。このような危険な茶葉を作った者は当然、突き止める。しかし、それを指示した者がいるなら、その者も必ず捕らえて相応の罰を受けてもらうつもりだ」 「……」 「……自分の手も汚さず、こんな陰湿なやり方……ッ……決して許さぬ!!」
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