六章/花

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別館を出て行った後のクラウンの行動は、ハルジオンの口からマナへ伝えられた。 まずは茶葉を王妃のもとへ届けた当事者である大官の執務室を訪れたが、容疑はおそらく白。毒と知らされた後でも金徳菊そっくりな毒花を手に取り、匂いを嗅ぐ迂闊な行為を見せた。 その後、クラウンはクリニア皇国出身者の元を訪ね、マナから聞いた話の信憑性を高めた。コロリウシは見つけ次第、根も絶やすほどの駆除対象であることは間違いない。クリニアでは花茶を飲む習慣がないため、逆に金徳菊の存在を知らず、コロリウシの茶葉を見せた時のクリニア出身者の反応は「害獣でも殺すんですか?」、だったそうだ。 その後、クラウンは自室にこもったため、ハルジオンも戻ってきた。移動距離は過去最長。マナの肩で寝そべりながら、(人使いが荒い)と訴えた。 無事に別館を抜けたマナの姿は庭園にある。王城を行き交う人間はよく働き、常に時間に追われているようだ。城内では女官の厳しい叱責がいたるところで聞こえ、下女は過剰なまで気を遣う。文官の視線は書類に落とされ、頭を下げる下男は空気と同じ扱いだ。 四季彩署がいかに下女にとって働きやすい環境なのか……恵まれた職場で働かせてもらっていることを再認識した。
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