プロローグ

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アルトが握る手綱の先には、宙に浮かんだマナがいる。2人はどこに行くにも一緒で、時には人間を驚かせるような質問を投げかけてくる時がある。 アラサンドラのもとを離れたカイジを訪ねてやってきた2人は、今日も赤い手綱で繋がっていた。 「カイジ、あのね。今日もシヴァナが泣いてたよ」 「まな、泣かないで、ゆうたけど」 「レイもむずかしい顔してシヴァナを慰めてた。ねぇ、カイジ。子どもを作るってそんなにたいへんなことなの?」 「まな、いもーとができたら可愛がるのに!」 「えっと……僕は弟が欲しいんだけど」 悪気のない子ども達の疑問に、カイジはグッと歯を食いしばった。 竜の交配は簡単なものではないと分かっていたつもりだが、サザンクロスが出来て今年で15年。レイとシヴァナの間に、いまだ子どもは出来ていない。 出産はおろか妊娠の兆しもなく、火竜と氷竜の相性が悪いのか、自然妊娠は望めないのか……観察官の間でも不安と焦りが見えるようになってきた。 竜の寿命からいっても、シヴァナはまだ十分に若く、繁殖適齢期だ。それはレイにも言える。決して2人が交配を怠っているわけでもない。 それなのに何故……何故、繁殖の報告がされないのか。国からは1日でも早く結果を出すように圧力をかけられ、もしこのまま繁殖がうまくいかなかった場合の対応策まで、南北交えた会議の中で議題にあがるようになっていた。
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