六章/花

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洗練された優美な香り、王妃様にふさわしい香りですねと、老爺は微笑んだ。 一方でマナは考え込んだ。プレセペ・マムが特別な花なのは分かったが、庭園にないその花を一体、どこで育てているのだろうか。バルコニーの花はガラスの一輪挿しに飾られていだけで、鉢などはなかったように思う。 特別な花は特別な場所で育てているのかと問えば、老爺は聞いたことがないと答えた。 「……城から離れた土地で栽培している場所があるのではないですか?」 「……そんなに広い面積は、必要ないと思うんだけど……」 (プレセペ・マムでしたら陛下のお部屋に) 「……」 答えたのは、庭園のピクシー。 (陛下自ら育てた花を) (大官が王妃様のもとへ届けています) (30年間ずっと) (10日に1度、欠かさずに) 「……──」
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