六章/花

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マナは自身が抱いていたノア国現国王、カフ・アル・カディブのイメージを頭の中で大幅修正した。 婚礼を挙げた30年前と変わらず贈られるプレセペ・マム。見た目の華やかさよりも、生命力の強い花を選んで妻の名前をつけたことにもきっと意味があるはずだ。 人知れず自らその花を育て、最も信頼する人物に託し、別館で暮らす妻に贈り続ける行為は半端な気持ちでは続かない。 第2王妃を迎えた今でも尚、陛下の心は王妃にあるのではないか──…… それに気付き、さっと血の気が失せた。 母親想いの孝行息子は、コロリウシの茶葉を贈った人物が父親だと思い込んでいる。 年頃の息子は、父親の男としての愛なんて考えたこともないだろう。 陛下じゃない──…… 陛下が王妃に毒を盛るはずがない。 しかし、そう思わせるきっかけを作ったのは、間違いなくマナだ。 「……ッ……ハルジオン、クラウン様がお部屋にいるか確認してきて」 (え!?) 「……ッ……下手したら私の首が、とぶかもしれない」
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