六章/花

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居棟の3階は国王陛下の私的空間であり、同じ王族といえども自由な立ち入りは許可されていない。3階に通じる階段前には守衛が控え、守衛から執事へ、執事から王へ、訪問者の来訪が告げられた。 身分階級の低い下男下女も、3階にだけは立ち入りを禁じられた。国王の身辺の世話や実務の補助は、数いる女官の中でも尚侍、典侍と呼ばれる優秀な女官のみが許され、軍の関係者も部屋に通される時は必ず武器を彼女たちに預けた。王の寝室を血を汚すことは絶対にあってはならないことなのだ。 以前は王妃も同じ寝室で過ごしていたが、今は第2王妃が使用しているということでもない。第2王妃と王子の寝室は別棟の3階。いつ陛下と寝室をともにしているかどうかは、直系の側近のみが知るばかりだ。 クラウンだけならば王への謁見は許されただろうが、マナ自身、陛下から直接話を聞こうなんて考えは毛頭ない。ただ少し……王の寝室が覗けたら……目的のものが見つけられたらと、そんな思いで塔へ登った。 5階建ての高さ。もちろん手段は、階段だ。
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