六章/花

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「……なん……だって……こんなところに……ッ……ゲホッゲホッ」 「……大丈夫ですか、クラウン様」 「私に手を引かれて、セト様に背中を押されて……どうしてクラウン様が1番疲れてるんですか、もう!」 「……武術バカと……山育ちと……ハァハァ……一緒にするな、どれだけ走ったと思ってるんだ!!」 「え。あそこから、ここへ移動しただけじゃないですか」 別棟から、塔へ。直線距離ならば確かに遠くはないが、遠回りしなければたどり着けない距離を走ったからこそ、クラウンは訴えている。 ──ペシッ! 「!?」 「密談ならさっさと話せ!!」 「……」 扇子で頭を引っぱたかれたマナは、理不尽な暴力ではないかとセトに共感を訴えたが、無口な従者は表情1つ変えない。まるで王子の影のように、所定の位置で傍観を決め込んだ。セシル王女の話では彼がクラウン唯一の味方という話だが…… (……面白みのない人間ですね) ハルジオンのささやきに、マナも小さく頷いた。
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