プロローグ

15/20

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/503ページ
珍しく腕の中に収まったマナの背中には、小さな翼が毛に覆われている。風竜は翼を動かさずとも自由に空を翔ることができるが、この翼が大きく成長したらそれは美しい翼になるだろう。 翼だけではない、もしマナが人型になれば、きっと将来は──…… 「アルト」 「なぁに?」 「弟はしばらく我慢してくれ。それまではマナを大切に守ってあげて欲しい」 「それは、もちろんだけど……でもマナはちっとも僕の言うこと聞かないし、いたずらばかりで困っちゃう……」 「それはきっとマナがアルトに甘えている証拠だよ。人はどうしても竜より寿命が短い……僕や、他の研究員がいなくなった時はどうか……アルトがマナを守ってあげてくれ」 「……うん、その言葉……レイにも言われたなぁ……」 「良い子だ」と、頭を撫でてくれた日が、カイジがアルトに見せた最後の笑みだったと記憶する。 翌日、何の前触れもなく政府の人間が保護区域を訪れた。何時間も施設の中で話し合いが行われ、その間、アルトとマナは研究所に近付くことを禁じられ、夜になってようやく保護官のもとを訪ねてみれば、皆が接近を躊躇うほどの憤怒を露わにしていた。 怯えるマナをアルトが抱きしめる。更にその小さな体をレイが包み込んだ。 「しばらくの間、2人ともツリーハウスにおいで」 「……レイ」 「……レイとシヴァナと一緒にねるの?」 「あぁ、2人を挟んで一緒に寝よう」
/503ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加