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珍しく腕の中に収まったマナの背中には、小さな翼が毛に覆われている。風竜は翼を動かさずとも自由に空を翔ることができるが、この翼が大きく成長したらそれは美しい翼になるだろう。
翼だけではない、もしマナが人型になれば、きっと将来は──……
「アルト」
「なぁに?」
「弟はしばらく我慢してくれ。それまではマナを大切に守ってあげて欲しい」
「それは、もちろんだけど……でもマナはちっとも僕の言うこと聞かないし、いたずらばかりで困っちゃう……」
「それはきっとマナがアルトに甘えている証拠だよ。人はどうしても竜より寿命が短い……僕や、他の研究員がいなくなった時はどうか……アルトがマナを守ってあげてくれ」
「……うん、その言葉……レイにも言われたなぁ……」
「良い子だ」と、頭を撫でてくれた日が、カイジがアルトに見せた最後の笑みだったと記憶する。
翌日、何の前触れもなく政府の人間が保護区域を訪れた。何時間も施設の中で話し合いが行われ、その間、アルトとマナは研究所に近付くことを禁じられ、夜になってようやく保護官のもとを訪ねてみれば、皆が接近を躊躇うほどの憤怒を露わにしていた。
怯えるマナをアルトが抱きしめる。更にその小さな体をレイが包み込んだ。
「しばらくの間、2人ともツリーハウスにおいで」
「……レイ」
「……レイとシヴァナと一緒にねるの?」
「あぁ、2人を挟んで一緒に寝よう」
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