六章/花

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「頭を……風が強いので、頭を冷やしておりました」 「お前も暇ではないはずだ、長居はするな」 「はい、父上」 すぐに締め切られた窓。最後に1枚、プレセペ・マムの花弁が風に流された。その1枚は別館まで届かないだろうが、代わりにまた、プレセペ・マムの花束が部屋の方に届けられるはずだ。 立ち上がったマナは頬杖を突いて、王の寝室がある方向を眺めた。 プレセペ・マムの花弁を摘んだピクシーたちが、庭園の方へ戻っていく。彼女たちが近寄るということは国王陛下の部屋に毒花はなく、陛下自身を恐れてもいない証拠だろう。 「……花を愛でる人が、花で人を殺すとは考えにくいですね」 「俺は父上を疑うよりも信じたい……改めて、毒茶葉の製造元を調べ直す。セト、お前にも裏で動いてもらうことになるがよろしく頼む」
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