六章/花

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寡黙な男はすべて承知している顔つきで頷いた。それからマナに目を向けて、すっかり型崩れしてしまった女官姿に顔を綻ばせた。 「今回はお前に随分と助けられてしまったな。今後も知識を頼ることがあるかもしれない。その時はよろしく頼む」 「では、私も“その時”まで、一介の下女に戻らせていただきます。暑いし、重いし、動きにくいし……もう女官姿はこりごりです」 早く四季彩署に戻ってサラエムを安心させよう。真面目だが気の弱い下男が、そわそわと自分の帰りを待ちわびている姿が容易に想像できた。 マナは四季彩署へ。クラウンはセトを伴い、再び母が待つ別館へ向かった。途中で庭園に寄り、下男の老爺から受け取った花の名前はセシル・ローズと、クラウン・リリー。王女と王子が誕生した祝いに名付けられた王家の花だ──…… 「……ッ……」 (マナ?) 「……背中が痛い」 (あとで薬草を塗ってあげましょう。背中も藻色になりますよ)
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