七章/狼煙

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【王の寝室】 「王妃の体調も快方に向かっている。どうやら毒を体内に入れた経路は、その日食べた料理では無いらしい。王妃付きの女官たちも本日より別館へ戻らせた」 「それは安心しました。王妃様の周りも何かと人手は必要でしょうから、私の部屋付きの者を貸し出したらどうかと、陛下に許可をいただこうかと思っていたんです」 「そうだったのか。だが、もうその必要はない。実は今回の件、クラウンが信じられない話を進言してきた」 「王子様が?」 「私が王妃に贈った花茶の中に、金徳菊に酷似した毒草の花が茶葉に使用されていたそうだ」 「!?」 「わざわざ稀少な毒花を使って茶葉作るように指示した人間こそが、王妃の命を狙った犯人だと言う。それ故、茶葉をどこで手に入れたのか教えて欲しいと懇願してきた」 「……陛下、それでは……」 「安心しろ。この一件からクラウンは手を引かせ、今後のことは私の手に委ねられた。“当事者”から話を聞くには、クラウンでは余計な混乱を生みかねない」 「……ッ……」 「スリリカよ……そなたが王妃へ贈った“金徳菊”の味はどうだ?」 「……、……ッ……陛、下……」 「花は微弱の毒だ、死にはしない。しかし、王妃が受けた苦しみは、そなたにも味わってもらう」 「……くッ……」 「浅ましいことは考えるな。身の程知らずは、王家にはいらぬ──……」 ……──
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