七章/狼煙

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*** 季節の変わり目は、気温の変化に対応できず風邪を引く者が多い。 マナ自身は12年間、病で寝込んだことはなく、四季彩署の中では常に看病される側ではなく、看病する側だったが、この年、初めて高熱を出して寝込んだ。 3日前からコンコンと咳をしていたのはサラエムだった。咳止めの煎じ薬を飲ませて様子を見たが、同日の夜にはマナ自身が熱を出し、軽症で済んだサラエムに看病される事態となった。 それを知らずに四季彩署を訪ねる知人の反応はさまざまだ。 「シェリルに移ったらかなわない」と、顔も見ずに帰っていったのはケリー。献身的に看病するサラエムに「マナを頼んだわね」と声をかけ、土産の菓子を手渡した。 一方で図々しく部屋まで上がり込んできたのはサーバルだ。のぼせ顔のマナの頬に触れ、「生活環境が悪い。熱が下がったらすぐさま籍を入れ、騎虎隊の居住区へ移り住もう」と無茶苦茶なことを言う。この時ばかりは無礼を承知でオイリとサラエムにより強制退去させられた。 同じ騎虎隊のハズマとナツメと関しては、親身にマナを按じるハズマとは対照的に「普段は白い顔が、面白いくらい赤くなっているな」とナツメは笑った。遠征から帰ってすぐの二人だったが、相変わらずの飴と鞭。しかし、「おかえりなさい」の言葉も今のマナの口からは出なかった。
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