七章/狼煙

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やけに神経を尖らせている…… 目を合わせ、1番に感じ取った違和感はざらりと胸に不安を抱かせた。主を待っていた目ではない。主に警戒を促す目だ。 「……なんだ?」 厩舎の中を見渡せば、カムだけではない。成体の騎虎が何頭か同じように姿勢を正している。本来であれば、出撃前に主の隣で控える際の姿勢だ。指示を受けることもなく騎虎が単独で臨戦態勢を整えていること自体が異常──…… 「……ッ──サーバル!!」 「!?」 「騎虎が敵意を感じ取っている!! 招集の鐘を鳴らし、城に危険を知らせろ!!」 「え……あ、はいっ!!」 「他の者は厩舎をすべて開け放て!! すぐに出撃が出来るように準備を整えろ!! 急げ!!」 「はい!」 「……ッ……」 緊急時の鐘を鳴らせば、待機している騎虎隊員は騎虎をとりにこの場に集まる。到着次第、迅速な行動に移せるように柵の錠を外していく。 柵から解放された騎虎は何をすべきか分かっているかのように、厩舎の外へと移動する。主の到着を待つモノもいれば、すぐさま行動に移るモノも少なくはない。主を迎えに行くか、無能な主は無視して自ら前線に出るかは、結局、個体の性格次第だ。 緊急事態を知らせる鐘が鳴る。その数9回。鐘は王城近辺のみならず、城下の都まで鳴り響いた。
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