七章/狼煙

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瓦礫が降り注ぎ、砂埃が上がる。都の象徴とも言える塔の崩落は、鐘の音以上に市民へ緊急事態を知らしめた。 町は混乱が生じ、町の外へ逃げようと城門向かう人の波が馬上の男を呑み込む。身一つで逃げ出す者、家から家財を持ち出す者、駄馬に荷物を積む商家、両手で子どもの手を引く母親、町へ出ていた軍人は市民の避難誘導に移り、できる限り町から離れるように声を張り上げる。塔の竜が都へ下りてくる前に。都へ向かってくる竜が、町へ入る前に──…… 「避難誘導は軍人に任せ、騎虎隊員は王城へ急げ!!」 「竜はあの1体だけじゃない、他にも都へ向かってくるぞ!!」 厩舎から放たれた騎虎は、塔に向かうモノもあれば、主を探しに自ら都や居住区に赴くモノもいた。相棒を得た騎虎隊員は、戦闘員に変わる。 害獣、犯罪組織を討伐する経験はあっても、対竜戦を経験した者はない。塔にしがみつく竜を見て、翼を広げたその大きさに戦慄した──……
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