七章/狼煙

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騎虎隊が家族と住まう居住区も、9度の警鐘が鳴らされた時から避難を開始していた。 隊員の指示を受け、その家族が屋内から避難誘導される。早々に主のもとへ駆けつけてきた騎虎の姿も多いが、騎虎の気性ではその背に女子ども、高齢者を乗せて避難させることは出来ない。ただ単純に、主とともに竜を討伐するために迎えに来た──…… 竜の襲来と同時に塔へ急いだ騎虎が血気盛んな性格ならば、主のもとに駆けつけた騎虎は“主とともに戦うこと”を使命とする気高い性格だ。優先すべきは人命ではない。ともに討伐へ行こうと、主の言動を窺う。 「……ッ……ケイト、子ども達を頼んだぞ」 「いやだっ、父さん、行かないで!!」 「騎虎隊である以上、竜が現れたらいかぬわけにはいかない……なるべく遠くへ逃げてくれ」 「お願い……っ……無茶はしないで! 必ず生きて、戻ってきて!!」 相棒に跨がれば、向かう先は敵のもと。単独で襲いかかっていた騎虎のもとに騎虎隊員が加わり、包囲網は厚くなる。しかし、瓦礫や火の粉は容赦なく居住区にも降りかかった。 そして聞き慣れない咆哮が大気を震わせ伝わってきた。塔の上から聞こえたものではない。もっと遠く……町の方角から聞こえてきたものだ──……
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