七章/狼煙

14/17
前へ
/503ページ
次へ
「……今のは、何……」 「……ッ……立ち止まるな、今は避難が優先だ。シェリルをしっかり抱きしめていてくれ」 「……ッ……」 革製の布を頭からかぶるケリーは、娘を抱いて屋外に出た。外へ出て目に飛び込んできたのは、真ん中から折れた王城の塔と、その上に鎮座する灰色の竜。 塔の中に……王城の中にいる人達はどうなったのだろう…… 長年勤めた職場が見るも無惨に崩落している。人々の悲鳴も耳に入るが、それ以上に炎が爆ぜる音、城壁が壊される音、興奮状態の竜が空を仰いで雄叫びをあげれば、今までにない火の粉が頭から降り注いだ。 腕の中の娘は大泣きしている。我が子には擦り傷1つ、付けさせない──……多少、苦しい思いをさせたとしても、ケリーは力強く抱きしめる腕を緩めなかった。 「……鳴き声が違う。さっきの咆哮は、べつの竜だ」 「!?」 「ハズマ!!」 「ナツメ!!」
/503ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加