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斜め一文字に並んだ3つの星。空を見上げながら、マナはそれをとって欲しいとアルトにねだる。アルトは精一杯翼をはためかせて夜空に近付くが、決して星には届かない。
月が出ていない夜、星月夜。2体の仔竜は老竜の背中に腰をかけて、抱いた疑問は率直に「何故」と問う。
「なぜ、空にあるものに触れないのだろう」
(……触れる必要も無いだろう)
「マナがどーしてもほしいのに?」
(……それより大事なものをなくさないようにまずはつとめなさい)
「ねぇ、アラサンドラ。アラサンドラはどうして施設に呼ばれてないの? レイもシヴァナも呼ばれたのに」
(……呼ばれる必要がわしにはない。くすんでいるとはいえこの竜眼、先の未来が嫌でも見える)
「……未来。今、皆が不安がっていることだね。アラサンドラの眼には、何が映っているの? マナや僕の未来はどうなってる?」
(……安心しなさい、必ず交わる)
「まじわる?」
(……求める気持ちが、いずれ必ず報われる)
「……」
アラサンドラの言葉は、アルトの心にすきま風を吹かせるようだった。そばにいて当たり前だった存在を失ってしまう。本人達の意志に反して嫌でも引き裂かれてしまう、そんな予感……
夜風に冷えた体を温めるように、白い毛玉を抱き寄せた。毛玉は小さな声で「こ、こ、こ、こ」と鳴いている。
「……大丈夫、ずっと一緒だよ」
「いっしょ、まなとあるとは、ずっといっしょ」
「そう、ずっと一緒だ」
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