八章/古傷

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悲鳴をかき消す雄叫びは誰が上げているものなのか。 黒い竜に群がる小さな影は、何なのか。 王城の周辺には今どれだけの人が残されて、ケリーは……ハズマやナツメは。クラウンは、今、どこに──…… 「……ッ……」 「マナ!? 大丈夫かい!?」 よろけた体をオイリが支えに入った。サラエムの小さな体とは異なり、頼れる腕1つで体は支えられるが、同時にその“小さな体”が見当たらないことに気付く。ずっと看病していてくれたのは、サラエムのはずだ。 「……サラエムは……」 「……っ……」 「……オイリさん……ッ……サラエムは!?」 「……町にも竜が現れて……サラエムは家族が心配だからと、行ってしまった」 「──ッ!?」 掴もうとする腕も、制止する声も振り払い、マナは城へ向かって駆けだした。 焼かれてしまう。燃え尽くされてしまう。脳裏にまで焼き付いてしまったあの悪夢は、1度だけで十分だ──……
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