八章/古傷

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逃げ場を失った母子とマナは、これ以上にない楽な標的だろう。火竜の火炎放射が向けられれば、3人の命は炭へと変わる。 「……ユーリ……ッ……お母さんから離れるんじゃないよ」 「……お母さん……ッ……」 我が身をていして炎から子を守る母の姿は、12年前、自分とアルトを守るカイジの背中と重ねて見えた。 あの時はただ、守られるだけだった。 泣き叫ぶだけで、誰かを守ろうなんて考えてもいなかった。 でも、今はそうじゃない。 助けたい命はここ以外にもあるのに、駆けつけることも出来ない。 力が足りない、体が足りない。 何もかも至らない…… ……──なんて、冗談じゃない!! 「ミスチバス!!」 「!?」
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