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「……ハァ……ハァ……ハハ……竜がいるなんて、聞いてねぇよ」
「……ッ……」
マナは、灰色の火竜……改め、薄墨色の髪色をした男を組み敷いていた。やはり、思っていた通り若い。サザンクロスを襲った火竜とは違うが、目に宿る狂気はよく似ている。
12年ぶりに同族と会ったところで仲間意識は微塵も芽生えない。沸々と沸き上がるのは、ただ、怒りだ。
お前の父親にレイは殺されたんだ──……
攻める言葉はいくらでも思い浮かぶが、マナ自身、現状は軽症と呼べる状態ではなく、息苦しさは増すばかりで咆哮1つもあげることが出来ない。
「……私は、12年前にクリニア皇国サザンクロス竜保護区から逃げ出した雌の風竜です」
「!?」
「……私の……希少価値を利用されないために、ずっと身を隠して生きてきた……でも、再び私の故郷を攻撃するというなら、私は全力で抗ってみせるし、利用される前に死ぬ覚悟だって出来ている……クリニアに帰ったら、政府の人間にそう伝えなさい」
「……へぇ? 俺をこの場で殺さなくていいのか? 雌の風竜は、随分とお優しいこ「私が生きていることをシヴァナとアラサンドラに知って欲しいの」
「……」
「レイとアルトに代わり、私が2人を救い出す……いつか必ず……近い内に、必ず!!」
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