八章/古傷

18/18
前へ
/503ページ
次へ
最後に名前を聞かれたが、マナはベッと舌を出してそれを拒否した。仮名として「クソガキ」と名付けたのは、ゼロ・ワン。「……コナマイキ」と名付けたのは、ゼロ・ツー。立ち去り際には兄弟揃って火炎放射を向けてきたため、マナは逆風で弾け飛ばした。 白煙と砂埃が晴れた頃には2人の姿は無く、逃走を手引きしたもう1体の竜の気配が残されている。3体目が何故、襲撃に加わっていなかったのか謎は残されるが、咄嗟の行動でマナ自身、再び肺に激痛が走った。 立っているのも辛くなり、地面に片膝を突く。その衝撃が骨に響いて、肋骨にヒビが入っているか、折れているのは間違いなさそうだ。 「ギャウッ!!」 「……ミスチバス、迎えに来てくれたの?」 勇敢な騎虎の背後には、竜の様子を見に来た騎虎隊員の姿も見える。ナツメから信じられないものを見る目を向けられ、マナは居心地の悪さを感じずにはいられない。何から、説明すればいいのか…… 「……マナ……その角は……」 「角? ……うわ、なんだ、これ!?」 「なんで気付かないんだよ!!」 側頭部から生えた2本の角は、耳の後ろから真っ直ぐ背中に沿って生えていた。まるで快晴の空を閉じ込めたような鮮やかな青色は、白が混ざる鈍色の髪によく映えていた──……
/503ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加