九章/竜の子

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居館2階の謁見の間は、天井こそ抜けてしまったが火事の被害は受けずに済んだ。幸い事実確認に同席させるべき人間は皆、生きて揃っている。 国王のカフ・アル・カディブは頭部に損傷を受けたが、安静が必要なほど大した怪我ではない。その背後に控える大官ヒコリはほぼ無傷だ。騎虎隊からは総隊長が右腕を吊った状態で現れ、部隊長のハズマとナツメもそれぞれ治療を終えた姿で体に包帯を巻いている。 四季彩署から呼ばれたキヌヅカ、女官長のワズマンに怪我は無いものの、招集された意味を知り、老練の2人でさえその表情は驚愕と緊張で強張っていた。 今、クラウンの前には国の重臣達の前でさらし者になっているマナがいる。体を覆っているのは薄い白布1枚。細く白い華奢な体であるものの、16才らしい健康的な体とも言える。ようやく女性らしい丸みが出てきて、目のやり場に困ると言えば困るのだが……実際に目が釘付けになっているのは2本の角だ。 側頭部から背中に沿うように伸びる角は、ちょうど髪を下ろした長さと同じ腰の位置まである。闘牛や牡鹿のように戦うためのものには見えないが……そもそも人間に生えるものではない。 当の本人も気にしている。「頭が重い」と愚痴る。そうだろうと同情するが、それを口に出すことは不謹慎のように感じられた。
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