九章/竜の子

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「……12年前にそれまで住んでいたサザンクロス保護区域がクリニア政府に襲撃され、竜族の雌は繁殖用に狙われました。保護区の観察官は私を逃がすために、私から角と翼を切り落とし風竜の力を奪ったんです」 「……風竜の力を?」 「激痛で意識は失ったけど……爆風に吹き飛ばされ、風に運ばれて私はこの国に行き着いたんだと思います。角を失ったばかりとは言え、まだ風竜としての力がわずかに残っていたのかもしれません。どうやってハズマ様の荷物に紛れたのかは……何も覚えていません」 「……」 「……」 父子は思わず見合わせた。 初めてマナがノア王国で目を覚ました場には、ハズマ、クラウン、国王と大官の4人が居合わせていた。同じ謁見の間で、今と同じように裸同然のマナが血に塗れて現れた。 あの時の衝撃はそう簡単には忘れられないが、思い返してみればあの時に負っていた傷の箇所に今、角が生えている。更に背中の傷。あれは翼を切り落とされたものだったのか。 「……それから?」 「それから……ハズマ様とナツメ様の善意で下女として働くことになりました。ただし、それまでのように飛ぶことも、風を操ることも、竜本来の姿に戻ることも出来ず……人間として、生きることにしました」 「まぁ……実際に人間として不信に思ったことはなかったが……」
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