九章/竜の子

7/20
前へ
/503ページ
次へ
竜同士の争い。どれだけ熾烈なものだったのか、今回の防衛戦とは比にならないものだったに違いない。 生かされ、生き残った竜が、その力を奪われ、たった1人で人間社会で生きていく。足取りもおぼつかなかったような幼子がこの年まで平穏無事な生活を送れたのは、 「……お前、ノアに行き着いて良かったな」 「本当にね」 「マナ!」 「こら、言葉遣い!」 引き取られた環境が良かったとしか思えない。周りから愛情深く育てられ培われた性格。娘同然に育てたハズマと、孫同然の面倒を見てきたキヌヅカ。2人が声を荒げれば、シュンと大人しくかしこまる。 角があろうが、無かろうが、今更、態度を改める方が難しい。 「それで? 今は風竜の力を取り戻したのか」 「うーん……どうでしょう……」 試しに片手をくるりと回してみる。それだけの動作で風が旋回し、わずかに残っていた天井を吹き飛ばした。屋外からは悲鳴。頭上からは大量の土砂。全員、身を清めたばかりだというのに、あっという間に頭から砂塵を被ることになった。 「「──城を壊すな!!」」 「手加減が難しい……!!」 「……」 「……なるほど」
/503ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加